読書狂時代

ブックレビュアー・はるうがお送りする書評、読書コラム、本に関するアレコレ。

もう見えなくなった「もの」たち【異形のものたち:絵画の中の「怪」を読む】(中野京子)

 

 

我々は、何に魅入られ何を恐れてきたのか?

人獣、モンスター、天使、悪魔、魑魅魍魎まで。

その絵画に込められた「異形」の意味とは?

「怖い絵」の作者が人間の本質を「怪」の中で読み解く最新作!

 

私たちがもう河童や妖怪を見ることができないからそれに対して魅力を感じるように、西洋絵画の中に天使や悪魔やモンスターを描くことで、「人在らざるもの」に魅力を感じていたのかな?と思わせる一冊。

 

想像上の生き物は想像でしか描くことができないからこそ、画家によって様々な造形が生まれてかなり面白い。

 

確かに悪魔や天使はある程度の姿が決められているけれど、それも画家によってやっぱり違う。

天使だと「性別」というものが存在しないという定義があるらしいのだけれど、聖母マリアに受胎告知を告げるのは「男性っぽい天使」という造形が「妊娠=男性も女性も必要」ということを暗示しているみたいで、定義を超えた絵画はなんだかユニークに感じられる。

 

著者の中野京子さんが興味深いことを言っていた。

怪物や天使や悪魔の絵画を描くのは、圧倒的に男性画家が多いとのこと。

つまり、現代でもウルトラマン仮面ライダーが好きな男性に繋がるのでは?ということらしい。

高校生の頃、特撮が大好きな同級生(女子)がいたけれど、今でこそ怪物や「人在らざるもの」が好きなのは性別を問わない気もする。

現に私は女だけど「幻想動物辞典」という本をボロボロになるまで読み込んでいる。

 

会いたくはないし、出会えたところで困ってしまう存在たちではあるけれど、でも心のどこかでそんな「不思議な存在たち」がまだちゃんと存在していると信じていたいのかもしれない。

 

 

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はるう