読書狂時代

ブックレビュアー・はるうがお送りする書評、読書コラム、本に関するアレコレ。

あっけない幕切れの王朝【名画で読み解く ロマノフ家12の物語】(中野京子)

 

 絶対君主制、女帝、苛烈な拷問や処罰、処刑、そして、戦争。

300年もの間続いたロマノフ王朝の歴史と、そのあっけない幕切れを名画とともに読み解く人気シリーズ!

 

 

どうやらシリーズをバラバラに読んでしまいっているようで、書評も順番がバラバラで申し訳ないです。

しかし、どこから読んでもそこまで遜色ないのがこのシリーズのいいところ。

 

今回はロシアのロマノフ王朝について。

私のロマノフ王朝の印象と言えば、やはり名探偵コナン「世紀末の魔術師」である。

知らない方に簡単にあらすじを話すと、怪盗キッドが次に狙うお宝がロマノフ王朝の秘宝「インペリアルイースターエッグ」で、そこから殺人事件なども絡み、最後にはニコライ皇帝などの歴史も絡んでくる、というもの。

もう名探偵コナンのアニメも映画も漫画も追っていないのだけれど、この映画とこれの一つ前の「14番目の標的」が大好きで死ぬほど見返している。

 

おっと、脱線してしまった。

つまり、私はこの映画でニコライ皇帝一家が全員処刑されたことは知っていた。

その説明が皇帝を肯定するようなものだったので(ダジャレか)、本当は処刑などされずにそのままただ王朝が滅びるだけでよかったのでは?と思っていた。

怪僧ラスプーチンにしても「皇帝一家に取り入った奇人」とだけしか認識していなかった。

 

しかし、歴史はきちんと学ばないといけいないと痛感した。

確かに「処刑」という選択は過激なものだったかもしれないけれど、結局はその政治手腕が振るわず、それを改善せず、家族旅行に逃げてばかりいた後年のニコライ2世は皇帝として、政治家として無能だったのかもしれない。

代々「皇帝」という立場の人物が政治をしていた国だったがために、皇帝は国というものをある意味では私物化していた。

朕は国家なり」なんて言葉が生まれるのもなんだか頷ける(こちらの言葉はフランスの王ルイ14世が言ったもの)。

 

毎回ハプスブルク家と比べて申し訳ないけれど、こちらもスキャンダラスではない。

いや、政略結婚などはあったけれど、恋愛結婚の人もちゃんといたし、ニコライ2世は家庭の人でもあった(と言うと、ひたすら血族結婚をしていたハプスブルク家が本当に恐ろしい)。

王族であれど、妻を愛し、自らの子供を愛するのは普通のことだと思うので(現代人の感覚からするとね)、処刑はされてしまったけれどある意味では普通の夫であり、父であったのだろうな、と想像がつく。

 

そして相変わらず、日本人としては宗教問題はなかなかセンシティブな問題で理解しにくいけれど、国を分断したり、人々を分断したり、ヨーロッパ史において多大な影響を及ぼすことはもう分かっている(日本でもキリシタンの迫害はあったしね)。

ロシアでも同じように苛烈な宗教弾圧はあった。

しかし、それも歴史の1ページだと捉えることができるほど、ヨーロッパ史は宗教による問題が必ず歴史に絡んでくる。

私はそれを他人行儀に「興味深い」と言ってしまえるほど、無宗教の日本人に色に染まってしまっているのだ。

 

 

はるう