読書狂時代

ブックレビュアー・はるうがお送りする書評、読書コラム、本に関するアレコレ。

今なおも続いていて、そしてこれからも【名画で読み解く イギリス王家12の物語】(中野京子)

 

女傑が生まれ、王朝が変わるごとに名前を変え、そしていまだに大国として王族が存在し続けるのは、イギリスだけである。

興味のつきない歴史を繰り返すそのイギリスの物語とは……?

名画で読み解くシリーズイギリス王家編!

 

 

さてもさても、ヨーロッパの王族なので血族結婚と政略結婚を繰り返している。

つまり家系図が本当にややこしい。

王」という存在を戴いてない国(「天皇」が王に代わるかもしれないけれど)の日本人からすると、王が死去するたびに政治のやり方が変わったり、法律が変わったり、はては宗教の自由までなくなるというのはやっぱり理解しがたい。

ともすれば、同じキリストという神を崇めているはずなのに、派閥が分かれる。

イギリスの場合は、カトリックプロテスタント

このちがいが本当に難しい。

というか、無主教な私には理解できないに近い。

「信じる神様は一緒なんでしょ……?」と言ってしまったら、この二派に怒られてしまうかもしれないけれど、多神教な日本で、なおかつ現代はわりと無宗教な人が多いときていると、この宗教を理解にはのはきちんと調べて、学ぶ姿勢が必要かもしれない。

この二派のおかげで国は分断するし、反乱は起きるし、宗教ってある意味恐ろしい存在である……。

 

この本の表紙は「レディ・ジェーン・グレイの処刑」(上記のアマゾンの画像参照。画像は絵の一部)という絵なのだが、彼女は政争に翻弄されてわずか16歳4か月で処刑されてしまう。

自らの信仰を捨てることを拒否し、実父の起こした反乱が彼女の処刑の決定打になってしまったらしい。

女性はことに歴史に翻弄されがちだが、彼女の処刑決定の書類にサインをしたのは女王メアリだった。

女性が同じような立場(ジェーンは女王という立場に9日ながらいた)が同じ立場だった女性を処刑する。

歴史的にみれば仕方のないこと。

それはこの本を読んでいれば分かる。

分かるのだけれど、あまりにもむごい運命だと虚無感に襲われる。

女王メアリは最初こそジェーンの処刑にはためらったらしいのだが、最終的には書類にサインをしてしまった。

あまりにも短い人生。

あまりにも苛烈な政争に巻き込まれてしまい、命を落としたジェーン。

ぜひ、検索してこの絵の全体像を見てほしい(それか、この本を買って解説付きで読んでみてほしい)。

儚く散っていく16歳の乙女の最期を見届けてほしい。

 

そんなセンチメンタルさせるイギリス王家の歴史だけれど、この「名画で読み解くシリーズ」で今も残っている王家はイギリス王家である。

いや、単純にすごい。

ハプスブルク家は血族結婚の果てに滅び、ブルボン王朝は革命に散り、ロマノフ王朝も革命で滅んだ。

何がこのイギリス王家をこんなにも強くしたのか?

それは「強くしたたかな女王」なのだなと、この本を読めばよくよく分かる。

男性の王がなんというか、ことごとく頼りないし、野蛮だし、放蕩気味。

そして、お妃に厳しい(まさに、男尊女卑!)。

それを女王が仕切れば(失敗は多少あったとしても)、上手くいくことが断然に多い。

だから今もエリザベス女王が統治(政治はやっていないけれど)をしていけるのだな。

 

余談だけれど、最近フランス大統領マクロンさんが支援者と握手しているときに、男性に平手打ちをくらっていた。

私はそのニュースを笑ってみていたのだけれど、ちょうど「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」を読んでいて(お忘れかと思いますが、ブルボン王朝はフランスの名門)、ゾッとした。

だって今でこそ大統領に平手打ちして処刑されることはないけれど(平手打ちした男性は逮捕はされた)、ブルボン王朝時代に王に平手打ちしたら即刻処刑だ!

 

 

はるう