読書狂時代

ブックレビュアー・はるうがお送りする書評、読書コラム、本に関するアレコレ。

「あなたの元にも」がダメなら無理【赫眼】(三津田信三)

 

 小学生とは思えない美貌と色香の転校生・目童たかりの恐るべき正体。

作家の夜中にかかってきた奇妙な電話の背筋の凍る顛末。

合わせ鏡の中を見すぎてしまった男のその後とは?

三津田信三初のホラー短編集。

あなたはこの恐怖に耐えることができるか……。

 

とりあえず、表紙が怖い。

上記のAmazonのリンクの画像を見てもらえば分かるけれど、この表紙を上に向けとくのを避けたいぐらい不気味な表紙。

この表紙の少女は表題作「赫眼」に登場する少女である。

読むのをためらわせるほどの力のあるイラストだ。

 

「赫眼」を含め12編の物語は収録されている。

メタフィクションの技法を取っており、虚構と現実の区別がつかなくなりそうでそこも怖い。

「刀城言耶」を書いているという記述があるからにして、ちょこちょことこの短編集で登場する作家は「三津田信三」本人であるということなのだろう。

怪異収集がご本人も趣味だということで、本の外の「三津田信三」が収集した怪異も4つ載っており、それこそ本当に「実話」なのか「物語」なのか混乱に拍車がかかる。

 

ある程度ホラーに耐性がないとこの本はおすすめできない。

特に「この本を読んだあなたのもとへと行かなければいいのだが」という、ある種古風なホラーのやり口が苦手な人は恐怖に慄くことだろう。

 

三津田信三さんと言えば「刀城言耶」シリーズでかなり有名だが、「刀城言耶」の方はホラーミステリという体を取っているが、この短編集は完全のどれもホラー。

なので、根っからホラーが苦手な人には確実におすすめはできない。

 

できないのだけれど、小説としてはかなり面白いので興味がある人は是非とも読んでほしい。

旧家の因縁とか好きな人いない?

人里離れた温泉の露天風呂に現れる謎の老人とか興味ある人いない?

 

ホラーを読み始めたばかりの私にはかなりの恐怖だった(と、言いつつ私は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」タイプなので、読んでもその瞬間だけしか怖がらない)。

けれど、その「怖がらせる技術」というものがすんばらしいので、「小説」という形だけを意識して読むことをおすすめしたい。

まあ、怖いことには変わりないんですけどね……!

 

「小説」という形に感動しつつ、背筋を凍らせて読みたい1冊である。

 

 

はるう